グリーンブックのスタディ3|行動化(アクティングアウト)とは何か

前回の振り返り

 前回は、グリーンブックの「第1章:私たちのアディクション」の冒頭部分を学びました。今回はその続きです。

前回は、私たちの「セックスアディクション」という病気が、
  • 精神、身体、スピリットの3つの側面に影響を及ぼす病気であること
  • 進行性であり、行動と結果は時間の経過とともに深刻化していくこと
  • 性的行動や空想に対して精神的にとらわれてしまう「強迫観念(オブセッション)」と、抵抗しようとする意志の力よりも強い衝動である「強迫的欲求(コンパルジョン)」の二つの組み合わせとして経験すること
  • SAAでは、実際に嗜癖的な性行動を行ってしまうことを「行動化(アクティングアウト)」と呼ぶこと
を学びました。

今回は「行動化(アクティングアウト)」について、さらに詳しく学びたいと思います。

「ハイ」を求める病気

「行動化」について、グリーンブックには次のようにあります。
 Acting out altered our feelings and consciousness, and we found this altered state very desirable. The obsession and rituals that led up to the sex act itself were part of the “high.”
 「行動化」は私たちの感情や意識を変化させ、私たちはこの変化した状態を非常に望ましいものと感じた。性行為そのものに至るまでの強迫観念や儀式的な行動も、その「ハイ」の一部だった。
(Sex Addicts Anonymous, 3rd ed., p.3)

まず、グリーンブックによると、「行動化」には、私たちの感情や意識を変化させるという特徴があると書かれています。
原文の「altered state」は、変性意識状態(へんせいいしきじょうたい)と呼ぶそうです。
「変性意識状態」とは、意識を失っているわけではないが、日常で目覚めている状態とは異なる意識の状態を指します。
要するに私たちは、行動化をすることで「ハイ」になるのです。

そして、私たちはこの感情や意識の変化(ハイの状態)を「非常に望ましい」と感じます。

さらに興味深いのは、
  • 実際の性行為そのものだけでなく、それに至るまでの強迫観念(性的な妄想に頭の中が支配されること)
  • 儀式的な行動(実際の性行動に至る前段階としての下調べや検索、計画を立てるなどの行動)
も、この「ハイ」の一部だということです。

先日のミーティングで、あるSAAメンバーが、思い描いていた通りの「行動化」ができてもなぜか満足できなかった、という経験を分かち合ってくれました。
その経験は、私たちが単に理想のセックスを求めているのではなく、この一連のプロセスを通じて得られる「ハイ」を追い求めているのだということを証明しているように思います。

基本的欲求<強迫的欲求(コンパルジョン)

さらに続きです。
 We sought this addictive high repeatedly, preferring it to many other activities, and feeling our compulsions more strongly than our basic needs to eat, drink, sleep, or be safe. These compulsive desires were irresistible, persistent, and insatiable. They went off like alarms in our heads that made it difficult to focus on anything else. When we wanted to act out, the urge didn’t go away. Nor did we feel satisfied when we got our “fix.” Instead, the more we acted out sexually, the more we wanted to act out.
 私たちは他の多くの活動よりもこれを優先し、この嗜癖的なハイを繰り返し求め、食べること、飲むこと、眠ること、安全であることといった基本的な欲求よりも、強迫的欲求(コンパルジョン)をより強く感じていた。こうした強迫的欲求は、抗いがたく、持続的で、決して満たされることがなかった。それは頭の中で警報のように鳴り続け、他のことに集中することを困難にした。行動化したいという衝動は消えることがなく、また、行動化しても満足感は得られなかった。むしろ、性的に行動化すればするほど、さらに行動化したくなった。
この文章から、セックスアディクトにとって「基本的欲求<強迫的欲求」であることが分かります。
普通の人たちに最も理解し難いのは、私たちセックスアディクトは、
  • 仕事
  • 日常生活
  • 趣味
  • 地域活動
  • 食べること
  • 飲むこと
  • 眠ること
  • 安全でいる
といった基本的な欲求よりも、嗜癖的な性行動に対する「強迫的欲求(コンパルジョン)」を強く感じるのだ、ということです。
多くのSAAメンバーは、嗜癖的な性行動のために、多くのものを犠牲にしてきました。
何の代償も払わずに、安全に行動化してきたというセックスアディクトは、一人もいません。

もしも私たちに、この身体的な異常反応ともいえる「強迫的欲求(コンパルジョン)」がなければ、私たちは自分で決めたボーダーライン(一線)を超えることなく、他の人たちと同じように安全にセックスを楽しめたことでしょう。

さらに「強迫的欲求(コンパルジョン)」は、「行動化しても満足感が得られず、むしろ、性的に行動化すればするほど、さらに行動化したくなる」といった特徴があります。
これは、「虫刺されを掻きむしると、もっと痒くなる」という現象によく似ています。
強迫的欲求(コンパルジョン)の存在は、私たちの多くが、「次で最後にする」と言いながらも、だんだんと行動がエスカレートしていくという謎の現象の原因ともいえます。


「脅し」は役に立たない

さらに続きです。
 We lost more and more of our lives to our addiction, which cost us time, money, relationships, our health, our jobs, and even our freedom. The consequences of our addiction did not make us stop or limit our acting out. The more we tried to control our behavior, the worse it got. We were unable to stop on our own, and the pleas or threats of the people in our lives didn’t help us to stop, either.
 私たちはアディクションによって人生のますます多くの部分を奪われ、時間、お金、人間関係、健康、仕事、さらには自由までも失っていった。アディクションの結果は、私たちに行動化をやめさせたり制限させたりすることはなかった。行動をコントロールしようとすればするほど、状況は悪化した。私たちは自分自身の力ではやめることができず、周囲の人々の懇願や脅しも、私たちをやめさせる助けにはならなかった。

「セックスアディクション」という病気にかかってしまった人たちは、実に多くのものを失います。
  • 時間
  • お金
  • 人間関係
  • 健康
  • 仕事
  • さらには自由
などです。

普通の人たちは、これだけ多くのものを失っているのだから、いい加減やめたらどうか?と考えます。
当然、そのことは本人が一番よく分かっているのですが、それでもこの病気にかかってしまった人というのは、どれほど悪い結果が引き起こされても止めることができないのです。

ミーティングに参加していると、「次こそはもう二度と同じ過ちを繰り返さぬように、今回の失敗を胸に刻んで、意志を高く保ちやめ続けます」と高邁な宣言をしている人を見かけます。

もちろん私も最初はその一人でしたが、そのような自分への「脅し」は、この病気を食い止めるためには何の役にも立っていないという事実を、認めざるを得ませんでした。

むしろ、虫刺されを掻けば掻くほど血が出てくるように、自分の嗜癖的な性行動をコントロールしようとすればするほどに、状況は悪化していくのでした。

「行動化」の本質

さらにグリーンブックでは、セックスアディクトがさまざまな形で「行動化」すると述べています。
  • 乱交
  • 匿名のセックス
  • 強迫的なマスターベーション
  • 破壊的な人間関係
  • 恋愛への強迫的な執着
  • 不倫
  • 強迫的な空想
  • サイバーセックス
  • インターネットポルノを含むポルノグラフィーの強迫的な使用
  • 性に対する過剰な恐怖や回避
  • 売春または買春
  • 強迫的な異性装
  • 電話セックス
  • のぞき行為
  • 露出行為
  • 公の場での性行為
  • 不適切な接触
  • 性的暴行や性的虐待
  • 動物との性行為
  • あるいは身体的・法的・感情的・スピリチュアルなリスクを伴い、他者に害を与えるその他の行動
などに関わると書かれています。
しかも、これらの「行動化」は、ほんの一例にすぎず、他にも数多く存在するといいます。

セックスアディクションという病気は、「進行性」という特徴があるため、人類が進化を続ける限り、今後もさまざまな形の行動化が生まれることでしょう。
最近だと、生成AIを使った嗜癖的な性行動がやめられない、と苦しんでいるメンバーの分かち合いを聞いたことがあります。

しかし、最も重要なことは、私たちがどんな種類の行動化をしているかどうかではありません。

セックスアディクションという病気の本質は、それがどんな嗜癖的な性行動であれ、
  1. 強迫的に行うこと
  2. 意志の力では抗えないこと
  3. 「行動化」は、否定的で苦痛を伴う結果をもたらす
という共通点です。

仮に、他の人たちが、「生成AI」を使ってセクシーな画像を生成することを楽しんでいたとしても、セックスアディクトである私たちは、それらの行動を「ほどほど」のところで止めることができないために、その行為を続けていると、いつかは必ず「悪い結果」がやってきてしまうということです。

まとめ

  • 「行動化(アクティングアウト)」とは、感情や意識を変化させる「ハイ」を得るための行動である
  • 性行為そのものだけでなく、強迫観念や儀式的な過程も「ハイ」の一部である
  • 私たちは結果ではなく、この一連のプロセスを通して得られる「ハイ」そのものを求めている
  • 強迫的欲求は基本的欲求よりも強く、抗えず、決して満たされることがない
  • 行動化しても満足できず、むしろ繰り返すほど欲求は強まる
  • アディクションは人生を蝕み、多くのもの(時間・お金・人間関係・健康・仕事・自由)を奪う
  • 悪い結果や周囲の脅しでは止まらず、自力でコントロールすることもできない
  • 行動化の形はさまざまだが、本質は同じ(強迫的に行う・意志の力では無力・必ず否定的で苦痛な結果をもたらす)
  • 他人には問題なく見える行動でも、セックスアディクトにとってはコントロール不能で危険なものになる

SAA-JAPAN グリーンブック・スタディ・ミーティングでは、現在この「第1章:私たちのアディクション」を学んでいるところです。
嗜癖的な性行動をやめたいと願っている方ならどなたでも参加可能です。ぜひ公式サイトよりお申し込みください。

それでは、次回に続きます。


SAA-JAPAN グリーンブック・スタディ・ミーティング