グリーンブックのスタディ|イントロダクション
2026年3月現在、『セックス・アディクツ・アノニマス(通称グリーンブック)』の日本語版は出版されていないため、この連載では英語版の『グリーンブック』を扱っていきます。
英語版の『グリーンブック』は、SAA-ISOのオンラインストアで注文可能です。
また、こちらのページで全文が公開されており、誰でも読むことができます。
当ブログでは、著作権に配慮して、『グリーンブック』からの引用は最小限にとどめます。
また、このブログで綴られる体験談などは、すべて筆者の個人的体験に基づくものであり、SAA-JAPANを代表する意見や見解ではないことを明言します。
この連載の目的は、嗜癖的な性行動をやめたいと願う日本のセックスアディクトに、SAAの回復のメッセージを運ぶことであり、他意はありません。
セックスアディクションとは何か
それでは、『グリーンブック』のスタディをはじめましょう。まずは、1ページ目からです。「INTRODUCTION(はじめに)」の章では、「Sex Addicts Anonymous(SAA)」という共同体について簡潔に説明しています。
まず、この『グリーンブック』という本を書いた人たちは、自らを「セックスアディクト」だと語っています。セックスアディクトとは、「セックスアディクション」という病にかかっている人たちのことを指します。
セックスアディクションの特徴はさまざまですが、ここで述べられている特徴の一つは、セックスアディクションは私たちの人生をほとんど破壊してしまう、ということです。
ここで、「Our addiction nearly destroyed our lives」という文章に注目してください。
この文章は、「私たちのアディクションは、あと少しで私たちの人生を破壊するところだった」と述べています(強調は筆者による)。
SAAに初めて参加する人の中には、「私の人生はまだ完全には壊れていない」とか、「私はあなたたちほど深刻ではありません」と言って、参加を辞退してしまう人たちもいますが、実際には、私たちの人生は完全に壊れていない場合のほうが多いのです。
仕事も家族も、生活していくだけの金も、まだ自由に使えるという人も少なくありません。
したがって、人生が完全に壊れてからでないとSAAに来る資格がない、と考えるのは誤っています。SAAに参加する際に、私たちに必要なものは、「このまま続けていては、やがて人生が壊れてしまう」という理由だけで十分なのです。
もしも、あなたが「SAA」という共同体に辿り着いたのなら、それが何かの手違いであると考える方が不自然です。
私たちは何かの間違いで、ミーティングに参加し続けているのではありません。
さらにセックスアディクションについて
『グリーンブック』を書いた人たちは、セックスアディクションの特徴としてさらに、「Our addictive sexual behavior was causing pain—to ourselves, our friends, and our loved ones. (私たちの嗜癖的な性行動は、自分自身、友人、そして愛する人々に苦痛をもたらしていた)」と述べています。セックスアディクトは、自らの嗜癖的な性行動によって、自分自身や友人、そして愛する人たちに苦痛をもたらします。私たちは、何度も「やめたい」と誓い、努力したものの、自分の力だけでは止められませんでした。まさに、人生は制御不能です。
そして、最終的には「危機」が訪れ、助けを求めた末に、「SAA」という共同体に辿り着いたのです。
解決は何か
まず、『グリーンブック』では、セックスアディクションから自力で回復するのは不可能である、とはっきり述べています。これは、長く苦しい経験によって裏付けられた事実です。
したがって、SAAのプログラムでは、「自分よりも大きな力(ハイヤーパワー)」が回復を可能にしてくれる、という信念に基づいています。
言い換えると、このプログラムのコンセプトは、セルフコントロールの力を取り戻すことではないということが、この序文から読み取れます。
現代では、「セックスアディクション(≒セックス依存症/性依存症)」に対する、様々な回復のためのアプローチが存在しますが、そのほとんどが「セルフコントロールの力を取り戻す」というコンセプトに基づいています。
一方で、「セックスアディクションから回復する」という目的は同じでも、「セルフコントロールは不可能である」という前提に立っているこの12ステップ・プログラムは、根本から全く異なるアプローチであることがお分かりいただけるでしょう。
実際に、SAAに辿り着いた人たちの多くは、なんらかの治療プログラムやカウンセリングなどを受けていた(あるいは受けている)という人が少なくありませんし、私もその一人でした。
このSAAという共同体は、「いろいろ頑張って試してみたけれど、それでもセルフコントロールの力を取り戻せなかった」という人たちに残された「最後の砦」のような存在です。
それでも、12のステップが示す「自分を超えた大きな力(ハイヤーパワー)」という概念がどうしても受け入れられなくて、一度は諦めたはずのセルフコントロールの力を取り戻そうとSAAを離れてしまう人や、グループに在籍していながらもスポンサーを持つことや、12のステップに取り組むことを拒み続ける「tourist」と呼ばれるメンバーたちも存在しています。
しかし、SAAの扉は常に「来る者は拒まず、去る者は追わず」の精神で開かれているのです。
SAAとは何か
したがって、私たちが信じるべき「自分を超えた大きな力(ハイヤーパワー)」の定義は、人によって異なります。SAAは特定の神を信じることを強制しません。
私たちの本来の目的は、嗜癖的な性行動をやめて、他のセックスアディクトを手助けすることです。参加資格は「やめたいという願い」があることだけで、性別・年齢・人種・宗教・性的指向などに関わらず、誰にでも開かれています。
SAAの中心となるのは、「12のステップ」であり、これらに取り組むことで嗜癖的な性行動からの自由だけでなく、心身や人間関係、セクシュアリティの癒しへと導かれます。
私たちを結びつけたもの
私たちを結びつけたものは、「絶望」です。私を含めて、多くのセックスアディクトは、「こんな悩みは誰にも話せない」とか、「世界で自分一人だけだ」「墓場まで持っていくしかない」という考えに囚われていますが、世界には自分と同じ病気で苦しむ人たちが何万人もいて、実際に回復している人たちがいます。
彼らは、同じ痛みを知る人たちと出会い、そしてハイヤーパワーへの信頼によって希望を見出しました。
この『グリーンブック』という本は、その体験と知恵を分かち合い、いま苦しんでいる世界中のセックスアディクトたちに捧げられています。
おわりに
私たち「SAA-JAPAN グリーンブック・スタディ・グループ」は、この『グリーンブック』を学んでいます。参加資格は、「嗜癖的な性行動をやめたい」という願いだけです。
ちょうど今は第1章の「私たちのアディクション」を学んでいるところです。
関心のある方は、ぜひホームページよりお申し込みください。
それでは、次回は「第1章:私たちのアディクション」に続きます。